二十八宿:それぞれの宿は空のどこにあるか
月はおよそ 27.3 日で天を一周し、毎晩ちがう星のあたりに「宿る」ように見えます。古代の天文家は太陽と月の通り道を二十八に区切り、日月五星がどこまで来たかを記録しました。二十八宿の名がすべてそろった最古の実物は、湖北省の曾侯乙墓から出土した紀元前 5 世紀ごろの漆箱のふたです。日本でも 7〜8 世紀のキトラ古墳の天文図に二十八宿が描かれ、それぞれに「すぼし(角)」「すばるぼし(昴)」のような和名がつけられました。
二十八宿の一覧
| 宿(読み・和名) | 四神 | 距星 | 西洋の星座 | 見た目 | 夜 9 時に南中する月 |
|---|---|---|---|---|---|
| 角宿(かくしゅく・すぼし) | 東方青龍 | おとめ座 α | おとめ座 | おとめ座で最も明るいスピカ。春の宵、南東の空の白い星 | 5月 |
| 亢宿(こうしゅく・あみぼし) | 東方青龍 | おとめ座 κ | おとめ座 | 角宿の東にある暗い星がいくつか | 6月 |
| 氐宿(ていしゅく・ともぼし) | 東方青龍 | てんびん座 α² | てんびん座 | てんびん座の四辺形 | 6月 |
| 房宿(ぼうしゅく・そいぼし) | 東方青龍 | さそり座 π | さそり座 | さそり座の頭、縦に並ぶ 3〜4 個の星 | 7月 |
| 心宿(しんしゅく・なかごぼし) | 東方青龍 | さそり座 σ | さそり座 | さそり座の心臓。赤いアンタレスと、その両側の少し暗い星 | 7月 |
| 尾宿(びしゅく・あしたれぼし) | 東方青龍 | さそり座 μ¹ | さそり座 | さそり座の曲がった尾と毒針 | 7月 |
| 箕宿(きしゅく・みぼし) | 東方青龍 | いて座 γ | いて座 | いて座の「南斗六星」の西、ティーポットの注ぎ口 | 8月 |
| 斗宿(としゅく・ひきつぼし) | 北方玄武 | いて座 φ | いて座 | いて座のティーポットの取っ手とふた、南斗六星 | 8月 |
| 牛宿(ぎゅうしゅく・いなみぼし) | 北方玄武 | やぎ座 β | やぎ座 | やぎ座の頭の暗い星 | 9月 |
| 女宿(じょしゅく・うるきぼし) | 北方玄武 | みずがめ座 ε | みずがめ座 | みずがめ座西部の暗い星 | 9月 |
| 虚宿(きょしゅく・とみてぼし) | 北方玄武 | みずがめ座 β | みずがめ座 | みずがめ座の 3 等星二つのあたり | 9月 |
| 危宿(きしゅく・うみやめぼし) | 北方玄武 | みずがめ座 α | みずがめ座 | みずがめ座とペガスス座の境 | 10月 |
| 室宿(しつしゅく・はついぼし) | 北方玄武 | ペガスス座 α | ペガスス座 | ペガススの大四辺形の西側の二星 | 10月 |
| 壁宿(へきしゅく・なまめぼし) | 北方玄武 | ペガスス座 γ | ペガスス座 | 大四辺形の東側の二星 | 11月 |
| 奎宿(けいしゅく・とかきぼし) | 西方白虎 | アンドロメダ座 ζ | アンドロメダ座 | アンドロメダ座とうお座にまたがる、暗い星の大きな輪 | 11月 |
| 婁宿(ろうしゅく・たたらぼし) | 西方白虎 | おひつじ座 β | おひつじ座 | おひつじ座の頭の 2〜3 星 | 12月 |
| 胃宿(いしゅく・えきえぼし) | 西方白虎 | おひつじ座 35 | おひつじ座 | おひつじ座の東の暗い三星 | 12月 |
| 昴宿(ぼうしゅく・すばるぼし) | 西方白虎 | おうし座 17 | おうし座 | プレアデス星団、日本名「すばる」 | 1月 |
| 畢宿(ひつしゅく・あめふりぼし) | 西方白虎 | おうし座 ε | おうし座 | おうし座のヒアデス星団の V 字、先端に赤いアルデバラン | 1月 |
| 觜宿(ししゅく・とろきぼし) | 西方白虎 | オリオン座 φ¹ | オリオン座 | オリオン座の頭の小さな三星 | 1月 |
| 参宿(しんしゅく・からすきぼし) | 西方白虎 | オリオン座 δ | オリオン座 | オリオン座。三つ星と四隅の明るい星 | 1月 |
| 井宿(せいしゅく・ちちりぼし) | 南方朱雀 | ふたご座 μ | ふたご座 | ふたご座の足もと | 2月 |
| 鬼宿(きしゅく・たまおのぼし) | 南方朱雀 | かに座 θ | かに座 | かに座中央の暗い四星と、ぼんやりしたプレセペ星団 | 3月 |
| 柳宿(りゅうしゅく・ぬりこぼし) | 南方朱雀 | うみへび座 δ | うみへび座 | うみへび座の曲がった頭 | 3月 |
| 星宿(せいしゅく・ほとおりぼし) | 南方朱雀 | うみへび座 α | うみへび座 | うみへび座の心臓、ぽつんと光るアルファルド | 3月 |
| 張宿(ちょうしゅく・ちりこぼし) | 南方朱雀 | うみへび座 υ¹ | うみへび座 | うみへび座の胴の一部 | 4月 |
| 翼宿(よくしゅく・たすきぼし) | 南方朱雀 | コップ座 α | コップ座 | コップ座 | 4月 |
| 軫宿(しんしゅく・みつかけぼし) | 南方朱雀 | からす座 γ | からす座 | からす座の四辺形 | 5月 |
距星は現代の一般的な表に従いました(觜宿はオリオン座 φ¹、参宿はオリオン座 δ。資料によって違うことがあります)。南中する月は当サイトの星空エンジンで、各月 15 日の夜 9 時(地方時)に距星が最も真南に近い月を求めたものです。和名は宿曜経系の伝承による読みで、地域や資料によって異なるものがあります。
宿の幅がばらばらなのはなぜか
二十八宿は空を 28 等分したものではありません。各宿は自分の距星から次の宿の距星までです。現在の星の位置で計算すると、最も広いのは井宿で約 32°、最も狭い鬼宿はわずか 1.5° です。
さらに不思議なのが觜宿と参宿です。本来は觜宿の距星が参宿より前にありましたが、歳差のために追い越され、現在の赤経では觜宿が参宿より 0.7° 後ろにあります。これが「觜参の入れ替わり」と呼ばれる現象です。宿の幅は数百年単位で変わるため、中国の歴代王朝は暦をつくるたびに測り直さなければなりませんでした。
見つけやすい七つの宿
ほとんどの宿は暗い星でできていて、街中では見えにくいものです。次の宿は明るい星か特徴的な形があるので、入門に最適です。
| 宿 | 見つけ方 | 季節 |
|---|---|---|
| 心宿(なかごぼし) | さそり座の中央で明らかに赤い明るい星がアンタレス(心宿二)。両側の少し暗い星と短い弧をつくる | 夏 |
| 参宿(からすきぼし) | オリオン座。等間隔の三つ星を見つけ、そのまわりで長方形をつくる四つの明るい星まで含める | 冬 |
| 昴宿(すばるぼし) | おうし座の肩にある、ぼんやりした小さな星の集まり。目がよければ 6〜7 個数えられる。日本では「すばる」 | 冬(晩秋の宵から昇る) |
| 畢宿(あめふりぼし) | すばるの南東の V 字形。先端にオレンジ色のアルデバラン | 冬 |
| 斗宿(ひきつぼし) | いて座のティーポット。取っ手とふたの六星が南斗六星 | 夏 |
| 室宿・壁宿 | 秋の宵、天頂近くの大きな四角(ペガススの大四辺形)。西の二星が室宿、東の二星が壁宿 | 秋 |
| 角宿(すぼし) | 春の宵、南東の白い明るい星(スピカ)。北斗七星の柄のカーブを延ばしてたどる | 春 |
台北 7 月 15 日 夜 9 時。空を見上げたときの向きで、北が上、東が左、中心が天頂、外周が地平線です。惑星と月は年によって位置が変わるため描いていません。特定の日の空は、このページのツールでご覧ください。
今夜の星空:いま頭の上に何があるか
日付・時刻・場所を選ぶと、その瞬間の全天星図を描き、月、惑星、高く昇っている明るい星、そして真南に南中している二十八宿を表示します。西洋の星座と中国の星官の線を切り替えられます。計算はすべてお使いのブラウザの中で行います。
星表:ヒッパルコス星表の 5 等星までの約 1,600 個(d3-celestial から整理、BSD ライセンス)。月と惑星は簡易計算で位置の誤差は 0.3° 以内、大気差は考慮していません。
暦注の「今日の宿」と宿曜占星術は別物
日本のカレンダーや暦注には「二十八宿」(その日の宿)が載っていることがあり、台湾の農民暦にも「値日星宿」があります。これは日付の順に二十八の宿が交代で回ってくるもので、28 日で一巡し、その夜に実際に南中している宿とは関係ありません。当サイトのエンジンでは 7 月 15 日の夜 9 時に心宿が南中しますが、その日の暦の宿は二十八日周期のどこに当たるかだけで決まります。平安時代に日本へ伝わった宿曜占星術も、牛宿を除いた二十七宿を生年月日から割り当てる別の体系です。択日で使うのは暦の輪番のほうです(択日)。
よくある三つの誤解
二十八宿はすべて黄道の上にある。
おおむね黄道と天の赤道に沿っていますが、黄道から離れた宿もあります。斗宿・箕宿は黄道の南、室宿・壁宿は北にあります。宿の役目は空を経度の方向に区切ることで、大事なのはその範囲です。
四神の七宿はそれぞれ一つの季節に属する。
四神は方角で分けたもので、季節ではありません。青龍は春の宵に東から昇りはじめますが、龍の全身が高く昇るのは夏の宵です(四神)。
二十八宿はインドから伝わった。
インドにも 27 または 28 の月の宿(ナクシャトラ)があり、どちらが先かは今も議論があります。曾侯乙墓の漆箱から、中国では戦国時代初めには完全な体系があったことがわかります。
正直に言うと:ここで扱うのは天文で、吉凶ではありません
このテーマで扱うのは、実際に空に見える星のことです。どの方角にあり、どの季節に見え、東洋と西洋でそれぞれ何と呼ぶか。暦注の「今日の宿」、宿曜占星術、テレビの星占いの十二星座、紫微斗数の星は、どれも星の名前を借りていますが別の計算体系で、その夜の空の星とは対応していません。当サイトの内容は参考・娯楽を目的としたものです。
今夜、真南にある宿は?
日付・時刻・場所を選ぶと、全天星図を描いて南中している宿を示します。
二十八宿のよくある質問
二十八宿の順番は?
東方青龍:角・亢・氐・房・心・尾・箕。北方玄武:斗・牛・女・虚・危・室・壁。西方白虎:奎・婁・胃・昴・畢・觜・参。南方朱雀:井・鬼・柳・星・張・翼・軫。
距星とは何ですか?
各宿の範囲を測る基準の星です。たとえば角宿の距星は角宿一、つまりおとめ座で最も明るいスピカです。隣り合う距星の間隔が、その宿の幅になります。
二十八宿は西洋の星座とどう対応しますか?
おおむね黄道十二星座とその周辺にあたりますが、一対一ではありません。さそり座には房宿・心宿・尾宿、オリオン座には觜宿・参宿があり、ペガススの大四辺形は室宿と壁宿に分かれます。
暦注の「今日の宿」は実際の空にもとづいていますか?
いいえ。暦の宿は日付の順に 28 日周期で回るもので、その夜に実際に南中している宿とは関係ありません。